米津玄師「Lemon」のカップリング「Paper Flower」を聴くと、アンナチュラルがよぎる




今日は金曜日。
私の心は、どこかポッカリと空いてしまった。

理由は分かっている。
この3ヶ月間の毎週末の所為だ。
アンナチュラルの所為だ。

散々楽しませておいて
散々夢中にさせておいて
あっという間に終わってしまうなんて。

ロス。
完全にアンナチュラルロス。
はやく手元にDVDが欲しい。
録画を消去した私のあんぽんたん

ここ1週間の私は、まるで何かに取り憑かれたかのようにアンナチュラル最終回を見まくっていた。

迎えた祝日。
雨の日を言い訳にして衣替えは後回し。
この3ヶ月で溜まっていた想いの丈をポチポチ指先で吐き出していた。

ノンストップで書き上げた。
その文字量はちょっと自分でも引いた。
そして保存せずに消去してしまった。

固まった。

蚊の鳴くような細い声が出た。
背中は丸くなり、頭はしな垂れた。
もう溜めてたエネルギーなんて残ってない。
でも文字に起こして昇華できてスッキリした。

もういいよ、DVDが届いてからもう一度見直して、気持ちが乗ったら感想くらいまた書くよ。

そしてこの1週間、主題歌のLemonも取り憑かれたように聴きまくっていた。もうどっぷりと。

でも先の件でスッキリしたら、音楽アプリのリストがすこし俯瞰して見れた。
そしたらあることに気づいた。

そうだ、まだカップリングを聴いてなかった。

やっと抜け出せたと思ったアンナチュラルのループ。
まだまだ抜け出せないとは聴く前には思わなかった。


米津玄師「Lemon」のカップリング、
「Paper Flower」のアンナチュラルみがすごい。

米津玄師ご本人は、あるインタビューで

曲を作るときに作品全体としてのバランスは考えますか?

との問いに対し、

あんまり考えないですね。今回は「Lemon」のあとにカップリングを作ったんですけど、最初から決め打ちで「こういう曲にしよう」って作り始めたわけじゃなくて、なんとなくやっていけば、やっていくうちに取っ掛かりが見えるんですよ。 その取っ掛かりを手繰り寄せていって、結果的に「こういう曲になりました」っていう感じです。

と語る。

曲自体はスローテンポで洋楽っぽい雰囲気がありつつも、少し気怠そうで、足元危うそうな印象を受けた。
しかも不協和音が多く、飛び道具の様な音も散らばり、それもまた不安を掻き立てる。
まるで薄暗闇の中を彷徨っているような。

砂漠が好き、と彼は言う。

俺は砂漠が好きなんですよ。砂漠って不毛の土地であって、人が住むのに 適した場所ではないじゃないですか。だから物語とかででも「いろんなものが滅んだ あとの場所」として描かれたりする。ただ、それがすがすがしいというか、すごく気持ちよくて。普段、この小さな国で肩を寄せ合って、すし詰め状態になりながら生きているからこそ、なんにもないだだっ広い開放感みたいなものに憧れるのかもしれないですけど

なるほど、これに通じるものを「Paper Flower」にも感じたのか。
ディストピア的とは、よく言ったものだ。

故にカップリングだからといって別段アンサーソングという位置付けでも、関連性を持たせた訳でもない。

でも私はこの歌を聴くと、アンナチュラルがよぎる。
特に、中堂系と糀谷夕希子のふたりのことが、どうしても頭をかすめる。

それは歌詞のちょっとしたことろで。ドラマでは描かれなかったシーンが何故か、フラッシュバックするかのように鮮やかにイメージとして脳内を支配する。

例えば、歌い出し。

言葉が出ない 何をしていても 最後に残るのは グズついた 愛
祈るように眠る あなたを見ていた

もう、棺の中で手を合わせた恋人の遺体を前に呆然と立ち尽くす中堂さんしか見えない。
※ドラマの描写にそんなのはない。

そして続く。

陸橋の手すりに登り お月様眺めてふらり
ほころんだ空洞の中で ここだけが世界の終わり

最愛の人を失った彼の喪失感とか、孤独感が浮かぶ。

白けた日々よ泡になれ ハレルヤ

サビ前のこの歌詞。
まるで死者を弔うかのよう。
そしてサビを迎える。

目の前の思い出が消えていく
あの時あなたはなぜ泣いていたの?
花が落ちるスピードで歩いていく
止まることのないメリーゴーラウンド

彼女が突然消えてしまったことに対しての悲痛さや後悔、疑問がぶつけられて胸が締め付けられる。
ひどくゆっくりで出口の見えない、灯りの見えないループに飲み込まれてしまったかの様な、赤い靴の様な、そんな絶望的なサビ。泣きたい。

遠くで湧き上がるコメディ その裏に隠したトラジティ
フィキサチーフで仕上げたヒューマニティ 巧妙に謳った神様のパロディ
7号線レイトショー帰り 全てがスロウになるあまり
喧騒さえ眠る最中で ここだけが世界の終わり

信仰に縋っても救いなんて無いと嘲笑われるかのような、自分だけ止まっているかのような、偽りで塗り固めた人間性が炙りだされるような。とにかく悲劇。

積み上げた塔が崩れていく
所詮その程度の知育玩具
私は未だにあなたへと
渡すブーケを作る陰気なデザイナー

ここで目線が女性側になる。
積み上げてきたふたりの関係が音を立てて崩れたのは、絵本が原因だったから、どうしてもそう思考が誘導される。所詮その程度、と。
逆プロポーズをして、目と鼻の先まで幸せが近づいていたのに、恋人とのすれ違いや不条理な事件に巻き込まれて着ることはなかったドレス。それに見合うブーケを死しても尚作る…もう残酷すぎる。


重ねて言うが、アンナチュラル主題歌のカップリングだからといって別段アンサーソングという位置付けでも、関連性を持たせた訳でもない。
でもアンナチュラルロスで勝手に私の都合のいいように解釈した結果、もはやセットです。

多分もうひとつのカップリング、「クランベリーとパンケーキ」と合わせて3曲しばらく聴き続けて、残酷で優しい世界に想いを馳せるんだろうな。

はやく届いてブルーレイ。



Paper Flower 
作詞:米津玄師
作曲:米津玄師

言葉が出ない 何をしていても 最後に残るのは グズついた 愛
祈るように眠る あなたを見ていた
車は向かう トンネルを通り ストローみたいに あなたの胃の中へ
祈るように眠る あなたを見ていた

広告に悪意のグラフィティ ボコボコの自動販売
知った風にはにかんでみたり 知らないふりでニヤついてみたり
陸橋の手すりに登り お月様眺めてふらり
ほころんだ空洞の中で ここだけが世界の終わり

言いたいことなんてそんなない 想像より二人はくだらない
白けた日々よ泡になれ ハレルヤ

目の前の思い出が消えていく
あの時あなたはなぜ泣いていたの?
花が落ちるスピードで歩いていく
止まることのないメリーゴーラウンド

寝室から出るとそこはまた寝室 部屋を出る自分の背中が見えた
祈るように眠る あなたを見ていた
清潔な空気で汚れてしまった 窓の外ブランコが揺れるお庭
祈るように眠る あなたを見ていた

遠くで湧き上がるコメディ その裏に隠したトラジティ
フィキサチーフで仕上げたヒューマニティ 巧妙に謳った神様のパロディ
7号線レイトショー帰り 全てがスロウになるあまり
喧騒さえ眠る最中で ここだけが世界の終わり

言いたいことなんてそんなない 想像より二人はくだらない
白けた日々よ泡になれ ハレルヤ

積み上げた塔が崩れていく
所詮その程度の知育玩具
私は未だにあなたへと
渡すブーケを作る陰気なデザイナー

目の前の思い出が消えていく
あの時あなたはなぜ泣いていたの?
花が落ちるスピードで歩いていく
止まることのないメリーゴーラウンド

積み上げた塔が崩れていく
所詮その程度の知育玩具
私は未だにあなたへと
渡すブーケを作る陰気なデザイナー